②月次監査 ~ 強靱な堤防を築くために ~
法人の申告や個人の事業の申告で重要になるのが「帳簿」です。
私どもは、自計化の実践を支援・指導しております。
事業者自らの手で、適時に、網羅的に、適正に作成された最新の帳簿は、会計に係る証拠書類であり、将来の指針となる重要な羅針盤となり得るものです。
私どもは、毎月1回お客様とお会いして月次監査を行います。
帳簿の品質の高さを維持する月次監査は、河川に設けられる堤防のようなものだと考えております。
堤防は晴天時にはまったく役に立たない、むしろ誰もがその存在を意識しないものだと考えますが、いざ悪天候が続き、河川が増水した際にしっかりした堤防があれば、洪水を防ぐことができます。
しかしながら、堤防が洪水を防いだ実績は、皆様にとって意識されないものではないでしょうか。
なぜなら、堤防が洪水を防いだときは災害が起こっていないので、堤防によって災害を防ぐ事ができたという事実に気付かれないからです。
自計化による帳簿の準備と月次監査も堤防と同じようなもので、その帳簿があることで、皆様に多くの恩恵があったとしても、その恩恵に気付きにくいという点までよく似通っております。
しっかりとした帳簿が無い場合、助成金・補助金・借入の手続きがうまくいかなかったり、税務調査の際の指摘や、税額についての増額修正申告または増額更正処分を受ける確率が確実に上がります。
その時になって、帳簿を準備しようとしてもすでに遅いのです。
大雨が降ってから、堤防を用意しようとしても間に合わないということと同じです。
このような視点から、法人を経営される方、個人事業を行っておられる方は、正確な帳簿を作成することについて、お金と労力を惜しんではいけません。
私どもは常にお客様に接し、品質の高い帳簿を備えるための努力しております。
品質の高い帳簿を用意した上で、経営者の方と経営相談を行ってはじめて、高い成果を産出することができると考えております。
かのマキャベリもその著作の『君主論』のなかで「私たちの諸行為の半ばまでを運命の女神が勝手に支配しているのは真実だとしても、残る半ばの支配は、あるいはほぼそれぐらいまでの支配は、彼女が私たちに任せているのも真実である」と記述しております。
世の経営は、その時の社会情勢や経済状況や運によって左右されるのは事実だとしても、半分ぐらいは人の手が及ぶ範囲です。その半分の、人の手が及ぶ範囲の中で、事業者が行うべきことが、自計化による帳簿の作成とその品質の高さを保つための月次監査を行うためのコストを負担することだと、私は考えております。
出典:『君主論』マキャベリ著。河島英昭訳。岩波文庫p183-p184。
所長・税理士 植田 浩行
税理士法人Dream24福岡支店